Roy曰く、「私はこれまでにMu-soとおよそ20種のBentley車のためにDSPを手掛けましたので、これらの経験はQbの開発にもとても役立ちました」。Naim社内ではワイヤレスミュージックシステムの開発とNaim for Bentleyの車載プロジェクトは別々の事業ですが、社内で情報共有を行いこれらのノウハウを活かしております。例えば、小さなエンクロージャーの設計は車のドアから、クラスDアンプではドライブユニットの開発から得た経験を活用しております。
ではRoyどのように開発したのでしょう。冒頭にあるコメントから、彼がQbのサウンドに長時間没頭していたかが大体おわかりいただけると思います。「うまく行きそうなDSPの構成を見つけ出したら、たくさんのジャンルの音楽を聴き続けます。ですから非常に時間がかかるのです」
この話をしている時、最終的なサウンドの決定までまだ1日半ほどありました。「つまり、あと1日半、最後の最後まで作業を続けます。ひょっとして最後の2時間に何かとても重要なことを発見しないとも限らないですから…」
Qbにおけるチューニングの重要な部分は、オリジナルのMu-soのサウンドと確実に「一貫性」を持たせることでした。Qbをセカンドゾーンのシステムとして使う場合、ゾーンを移動した時にサウンドの調性が変わらないことが重要です。
Qbにおけるチューニングの重要な部分は、オリジナルのMu-soのサウンドと確実に「一貫性」を持たせることでした。Qbをセカンドゾーンのシステムとして使う場合、ゾーンを移動した時にサウンドの調性が変わらないことが重要です。

各ドライブユニットは、オリジナルのMu-so同様、其々のアンプチャネルによって電力を供給されてますが、6基でなく5基であることが主な違いで、初代のMu-soが75Wx6基であるのに対し、Qbは2基ずつのミッドレンジと高周波ドライバーそれぞれが50W、1基のベースが100Wとなっています。
Matthieu Guilloux曰く、低めの出力に加え、カスタムメイドのドライブユニットも低インピーダンス設計の為、低電力となりました。更にウーファーの為に必要な電力は、Mu-soのように2基ではなくシングルウーファーに単にアンプチップの両側を使用することで賄える事により、Qbの所要電力を減らすことが可能となりました。
Qbのアンプは大きめのモデルと同じもので、最初にリスニングテストによって選ばれており、性能は信頼の置けるものです。出来るだけ同じNaimサウンドをQbから出したいこともあり、別の選択の必要性をチームは全く感じませんでした。
低電力であることは、すなわち発生する熱も低めであることを意味し、これは信頼性と安定性のためには良い事です。さらに出力トランジスターと直接結合されたヒートシンクの負担を減らします。Matthieuの説明によれば、周期的なオン/オフ動作および-20℃~80℃にわたる温度試験が工場で何週間も続けられたそうです。ユニットの電源を切り、それ自体が冷えていくのと共に室内の温度を下げ、その後、最大音量にしたQbからピンクノイズを発生させながら温度を急激に上げる試験を実施しました。
この加速寿命試験が意味するところは、Qbには5年以上の耐用年数が(80℃近くの室温において最大出力で動作させたとしても)あることを店頭での発売開始前に証明されたという事です。試験時、Qb内の温度は100℃を超え、製品内部で使用されている接着剤が少し柔らかくなったことがありましたが、実世界でそのような状態が再現されることは先ずありません。
組み立ての最終段階は、5側面のベースシャーシである「ボックス」と、トップパネルとの間とヒートシンク(リアパネル部)とのつなぎ合わせでした。トップパネルとヒートシンクはそれぞれ別々に組み立てられた後、製品全体が確実に密閉されるように完全ユニットとして取り付けられます。これらの部品とメインシャーシとの一連の複雑な機械的接合に加え、低価格品のスナップフィット組立とは違い、Qbではボルトで全体を繋ぎあわせることによって剛性が確保されました。
構造部材の最後を飾るのはクリアなアクリルのベースで、これにはNaimのロゴが付けられております。Qbが宙に浮いているかのような印象を与えますが、しっかりと接着されており、「キャビネット」全体で更に強度を与えています。
ヒートシンク(リアパネル)には、ワイヤレス接続のため的確にルーティングされるアンテナと有線接続用端子が装備されており、イーサネットまたはWi-Fi経由でUPnP、Apple Music用AirPlay、ストリーミングサービス(Spotify、TIDAL)、インターネットラジオが楽しめます。更にaptX対応Bluetoothと共に光デジタル、アナログ、iOS機器対応USBのポートも装備され、機能的にはオリジナルのMu-soと同一です。
Mu-so及びQbのグリルももちろん取り外し可能で、オーナーの方は4色 – 標準装備のブラック、オプションのディープブルー、ヴァイブラントレッド、バーントオレンジ – でカスタマイズを楽しむこと出来ます。グリルを外し、スピーカーの全てが如何に素晴らしく駆動しているかを誇らしげに見せる事も可能です。

QbのグリルはオリジナルのMu-soよりもやや複雑な構造で、3面のヒンジ付きラップで構成されています。オリジナルのMu-so同様、表面のデザインは「ウェーブ」モチーフになってます。このグリルは、ABSパネルにポリプロピレンで被覆したヒンジを組み合わせ、グリルクロス自体を伸展させて適切な位置に溶着させており、設計・製造プロセスにかなり苦労を要しました。
Mu-so Qbは当社製品の中で最も手ごろな価格のシステムで、より多くの人に当社のブランドを紹介することを意図としたモデルです。徹頭徹尾Naimの製品であり、他のNaimシステムと同じように、企画から開発、製造までの全てが努力の結晶です。
Qbはシンプルかつコンパクトで魅力的なモデルですが、同時に40年以上の歴史をもつNaimの経験と実績の賜物です。今後Naimを語るべき代表モデルです。
Mu-so Qb 2016年春に登場